NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く
パティ・マッコード
光文社
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ある日のネットフリックスの経営会議で、私たちは突然気がついた。あと9か月もすれば、アメリカの全インターネット・トラフィックの3分の1を、うちの会社が占めるようになるのだと。

パティ・マッコード. NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.68-70). Kindle 版.

本書の冒頭は上記の衝撃の一文から始まります。

ご存知の方もいると思いますが、Netflix は自社の文化や行動規範を定めたドキュメントをカルチャーデックという名前で世界に公開しました。 Facebook の COO が「シリコンバレー史上、最も重要なドキュメント」と絶賛したものです。 Netflix の採用ページにはカルチャーデックの内容が記載されており、それは今もなお進化し続けています。

本書「NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~」ではそんなカルチャーデックの作られてきた舞台裏の姿を知ることができます。

カルチャーデックを読んでみたけど、実際の現場ではどうやっていけばいいのさ、と思った人はぜひ本書を読んでください。 スタートアップや人事の方は必読だと思います。あまりの内容に、言うは易し行うは難しを肌で実感できるでしょう。

以下、特に印象的だと感じた部分を記録しておきます。

目次

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序章  新しい働き方 - 自由と責任の文化を育む
第1章 成功に貢献することが最大のモチベーション
第2章 従業員一人ひとりが事業を理解する
第3章 人はうそやごまかしを嫌う
第4章 議論を活発にする
第5章 未来の理想の会社を今からつくり始める
第6章 どの仕事にも優秀な人材を配置する
第7章 会社にもたらす価値をもとに報酬を決める
第8章 円満な解雇の方法
結論

序章より

この本はネットフリックス創業の歴史をふり返る本ではない。事業環境の急激な変化に柔軟に適応できる、ハイパフォーマンス文化を育むための方法を、あらゆるレベルのチームリーダー向けに説明する本である。

本書では一貫して、チームづくりの重要性とマインドの持ち方について語られています。経営陣の最重要事項は優れたチームを作ることだと言っています。

第1章より

優れたチームとは、これからどこに向かおうとしているかをメンバー全員が知っていて、どんなことをしてでもそこに到達しようとするチームのことだ。優れたチームをつくるのは、インセンティブや管理手法や従業員特典などではない。必要なのは、一人前の大人として挑戦に立ち向かうことを切望する有能な人材を採用し、その挑戦が何なのかを、彼らにはっきりと継続的に伝えることだ。

自由と責任の文化を築くというサブタイトルにある通り Netflix では様々な慣行や規則を無くし自由に行動できることになっています。それはおおよそ日本では考えられない - おそらくアメリカでもそれほどない - であろう内容です。

例えば以下のようなものです。

  • 有給休暇がありません、そのかわり妥当と思うだけの休暇を自由に取得できます。
  • 経費規定がありません、必要だと判断したら会社のお金を使ってください。
  • 旅費規定がありません、必要だと判断したら会社のお金を使ってください。
  • 年次ロードマップがありませんしそのための予算編成もありません、代わりに四半期の計画があります。

本当にこのような慣行や規則を廃止してうまく回るのでしょうか。不思議でなりません。 これらが適切に運用されるためにはもちろん社員のマインドが重要です。Netflix では社員にどういうことを期待しているのでしょうか。 第2章に続きます。

第2章より

従業員に十分な情報を与えられたかどうかを、どうやって判断するか? 私の基準を教えよう。休憩室でもエレベーターでもいい、従業員を呼び止めて、「うちの会社が今後半年間にとりくもうとしている最重要課題を5つ挙げてみて」と尋ねる。その人が間髪入れずに1、2、3、4、5点を、できればあなたが説明するときに使った言葉のまま、理想をいえば同じ順序で挙げることができれば、合格だ。もしできなければ、ハートビートはまだ十分強いとはいえない。

Netflix ではどのレベルや職種に対しても情報がオープンに開かれています。そして情報を知ることができるだけでは不十分で情報を理解して知っているという状態であることを期待しています。 そして情報を伝えていくのは経営陣の責任であると考えています。情報の非対称性を無くすためにコミュニケーションを重視し、チームがきちんと事業を理解して働いているか、という事を徹底しているようです。

第6章より

採用面接は、マネジャーが予定しているどんな会議よりも優先され、また役員会の出席者が会議を欠席または中座してよい唯一の理由だった。噓ではない! あなたが候補者を評価するように、候補者もあなたを評価している。そのことを忘れがちだ。

6章には採用面接に関する話しが出てきます。みなさん気になる部分だと思いますが給料に関して Netflix はどういうスタンスを取っているのでしょうか。給料に関するいくつかの特徴を取り上げておきます。

  • トップレベルの給与を払うがそれをウリにはしない
  • 候補者に報酬に関する方針は伝えても、具体的な数字は出さない
  • ボーナス制度がない
  • ストックオプションを転職を防止するための「金の手錠」として使うことはせず、権利確定期間を設けていない
  • ストックオプションは毎月付与して長期的な値上がりを期待できるよう、権利行使期間を10年間とした

基本的にお金のことは採用段階においてはあまり話さないそうです。それは面接に進んで間もない段階では、候補者が十分な給与を今の会社でもらっていないか、もらいすぎていてそれ以上を望めないか、あるいはお金だけに関心があって仕事にはあまり熱意がないかのどれかであって、Netflix はそんなお金の悩みを解決する場所ではないから、ということでしょう。

とびきり優秀な人材でカルチャーにマッチしてチームで戦えるポジションがある、という人には十分な給料を与えるけれど、とびきり優秀だからという理由だけで採用しないし、高い給料を払うということもしない、という方針ですね。

まとめ

本書を読んだ後、自由と責任の文化という言葉がこれほどまでに体現されているのかということに驚きました。

チームづくりに対する重要性を説き、その達成のためにはなかば慣行となっている制度を廃止する。 チームを構成するメンバーは独立した一人前の大人であり、彼らは自由な意思決定を行うとともに Netflix に対し責任を果たす。

カルチャーデックに書ききれないその文化の育成が、本書では臨場感を持って書かれています。スタートアップ界隈の人にはぜひ一読をオススメします。