タイトルからして難しそうな印象を受けるが中身は平易な言葉で書かれており数式などは出てこない。理論を細かく解説する類のものではなくファイナンス理論全体を歴史に沿った形で読み物形式にした本。

これ一冊でファイナンス理論の基礎が大体分かってしまう、分かった気にさせてくれる大変よい良書。

ランダムウォーク理論から始まった確率的な未来予測、なぜランダムウォークになるのかを説明するとされる効率的市場仮説の提唱とその内容、ポートフォリオ理論による分散効果の説明、リスク管理、VaR、起こるはずのなかったブラックマンデー、人の心理状態を研究した行動ファイナンスの発展、などどれも目を引くトピックばかりであった。

これを読んだことで個人投資家として成果をあげられるかはまったく未知数だが、得られるものはかなり多いはずである。

人は無意識のうちにいつも同じように不合理な判断を下してしまう。だが、自分の中ではうまくつじつま合わせをしているので、自分が偏った判断をしているとは露ほども思わない。行動ファイナンスの本を読んで、「これで市場(他の投資家)を出し抜ける」と思い込んでしまうが、本当は相変わらず、自分の判断は出し抜こうとしているその他大勢と同じ方向に歪んだままなのだ。

田渕直也. ファイナンス理論全史儲けの法則と相場の本質 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2342-2345). Kindle 版.

ファイナンス理論全史――儲けの法則と相場の本質
田渕 直也
ダイヤモンド社
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