ベンチャーキャピタル (以下VC) と一言にいっても、体系は種々あって、大きく2つに分けるとすれば会社組織と投資事業組合があります。著者の村口さんは、組織分業と会議決定を特徴とする会社組織のVCに務めた経験からダイナミックな投資事業を行うことの限界を感じ、ご自身で独立系VCである、日本テクノロジーベンチャーパートナーズを設立され数多くの企業を上場へと導いてきました。そんな村口さんの考えるVCのあり方や起業家とは何か?という問いかけに対する一つの解答がこの本で示されています。

第三章「起業家に立ちはだかる七つの壁」では典型的な失敗シナリオを架空のプロジェクトを基に芝居仕立てにして述べられています。色々参考になることはありますが、例えばプロジェクトの改善でよくみられるPDCAを回すということについて、大企業ではこの方法でうまくいくかもしれないけど、新規事業領域では役に立たないと述べられています (PDCAにより予算計画統制をする場合に限る)。 他にもラウンド毎による資金調達がちぐはぐになっていく過程など詳しく書いてありました。この章だけでも読む価値はあるので気になる方は手にとって読んでみられてはどうでしょうか。

起業家に必要な素質とは何か

初期段階のベンチャーにおいてはVCは事業だけでなく人を観るとよく言われます。それはすなわち起業家に必要な素質を持っている人に対して、VCは投資する (金をだす) ということです。本書を引用しつつ起業家に大切な心構えを自分なりにまとめてみました。

未来に対して真面目な人

何が起こるか分からない不確実な未来に目を向けられること。

顧客を発見し価値を作れる人

常に顧客の体験を観察し続けなければいけない。自分達のサービスを出すのであればそのサービスを使って、顧客の気持ちを理解しようとすること。

1週間で成長できる人

ベンチャーの世界は日進月歩ではなく秒進分歩の成長速度が求められる。1週間でも世界情勢やとりまく環境はがらりと変わっている。その変化についていくこと。

粘り強く、あきらめない人

特に困難に直面したときほど、この気持ちが大切になってきます。勇往邁進すること。

ものごとを俯瞰できる人

ビジネスでは様々な人が複雑に絡み合ってきます。そんな時、自分の立ち位置だけでなく相手の立場にたって物事を考える能力が必要になってきます。

互恵関係を結べる人

競争は物事を発展させる原動力であるが、競争で目をくらませる前に下地となる良好な互恵関係を築き上げ、いい意味での競争を行わないといけない。

組織改革のタイミングを知る人

人の採用と組織作りにはしっかりした事業基盤とタイミングが重要である。

48時間で切り替えられる人

失敗が起こった時、冷静に状況を判断し危機を乗り越えられるよう奮闘すること。

自戒を込めて書きました。これから起業する人も、もう起業してる人も、ぜひ一度読んで参考にされるといいと思います。